年頭にあたり、昔に書いたこんな原稿をあげてみます。
ジョンとヨーコの出会いにおいては、「お金を払った気になって、想像の釘を打つ」というエピソードの方が有名でしょうか。1966年、ロンドンのインディカ画廊での個展で、《Ceiling Painting》を見たジョンが、その言葉が「NO」ではなく、「YES」だったことに救われた、と言ったこともよく知られたエピソードです。
向かい風は厳しい昨今ですが、今年はいろいろなことを悔い改め、なんとかがんばっていきましょう。
あらゆるすばらしい瞬間が永遠であるように。


「あなたの夢はなんですか?」
これは、美術家の堀浩哉氏と堀えりぜ氏そして私の3人からなるユニット、「ユニット00」(ゼロゼロと発音する)が、先日開催された「越後妻有アートトリエンナーレ2003」で発表した作品『記憶するために―私には夢がある』で投げかけた質問である。そして、この直裁な問いは、さらにもうひとつの問いを含むだろう。それは「夢」とは何か、ということ。あなたにとって「夢」とは何か?
「幸福論」が、けっして幸せを成就するためのものではないように、ある目的や追憶に回収されることのない「幸福」をこそわたしたちは追い求めなければならないと思う。そのときわたしたちの「夢」は、より大きな「幸福」へと繋がっていくのではないだろうか。
オノ・ヨーコの個展会場で、ジョン・レノンがはしごを昇り、天井に「YES」の言葉を見つけるという、ジョンとヨーコの出会いにおける良く知られたエピソードのひとつ。それが「NO」ではなく「YES」であったこと。この虫眼鏡で見る、ひっそりとした肯定のメッセージは、だからこそ力強い個の存在表明でもあり、多くの人の心を動かす力ともなりえた。
しかし、「夢」を「夢」たらしめているものとは、それがまだ実現されていないということである。「夢」が「夢」であるためには、それは実現されてはいけないという二重性。たとえば『イマジン』という歌が、なぜわたしたちが想像することでしか、そのような理想を享受し得ないのか、という問いかけでもあるように。

Flyer 2003年11月号