David Bowie


デイヴィッド・ボウイの隠れた名作である、このファースト・ソロ。70年代の10年がボウイの最初の黄金時代だが、そこからも切り離されてあまりにも言及されることの少ない不幸な作品ともいえる。個人的には、地味ながらいい曲の多い力作だと思う。70年代前半までのボウイには、ビフ・ローズやタイニー・ティムあるいはスコット・ウォーカーといったアーティストの影響が部分的にみられるが、特にこのアルバムには、それが濃厚に反映されている(ような気がする)。
この曲は、レオス・カラックスの映画『Boy meets Girl』でも一曲まるごと演奏されている。それは、映画中で実際にミレーユが部屋でレコードをかけてこの曲を聴くからなのだが、それにアレックスが夜の街を徘徊するシーンが挿入される。そしてふたりは出会う。
歌の内容は、恋にやぶれた男が現実逃避して、夢の中のお伽噺のような(どこかドノヴァン的な)世界で彼女と暮らすことを夢想しているような歌だが(たぶん)、映画もどこか現実から遊離した寓話のようであり、そんな夢のようなシチュエーションでふたりは出会い、そして悲劇的な結末を迎える。
ここでは最後のヴァースを訳していないが、ついにはほんとうに夢の世界を築き上げてやる、と決意する、そんなちょっと変わった歌である(たぶん)。が、こんなモチーフが初期のボウイには多い。


   夢の中に生きられたなら
   きみを一緒につれて行こう
   黄金の馬に乗って
   ぼくのお城に住もう
   きみに召える者たちもそこにいる
   きみの声を聞くしあわせ


   きみのために竜を退治しよう
   この国から悪い巨人たちを追い出そう
   でも きみは気づくだろう
   ぼくの夢の中ではなにものもきみを傷つけたりできないと
   ぼくらはただいつまでも愛し合うだろう
   夢の中に生きられたとしたら


   夢の中に生きられたなら
   ぼくはきみがはなしてくれたことや
   知らない過去の男たちを許すだろう
   それは夢の中の心の傷 きみはぼくを離れてしまった
   ただ愛だけがぼくの夢に住むことができる


   ぼくが願えば 雷雲は消えるだろう
   願おう そうすれば嵐は消えてゆく
   もう一度願おう そうすればきみはぼくの前に立っている
   空が序曲を描きながら
   木々はぼくの夢のリズムを奏でる


   夢の中に生きられたなら
   どうかそこにいてぼくと会ってほしい
   きみを理解する人間として
   夢の中に生きられたなら
   ぼくはきみがくれた痛手を忘れるだろう
   そして ぼくらは新天地に住むことができる

"When I Live My Dream"