Transformer - Digipack


中学生のころ、このLPと「ベルリン」を買った。ちょうど廉価盤で再発されたころだった。すぐに気に入ったのはこっちの方で、「ベルリン」は良さがわかるまでに相当な時間がかかった。当時坂本龍一が、ルー・リードの歌を聴いて思うのは、歌というものが声色だということだ、というようなことを言っていたが、たしかにそうだと思う。
このLPに惹かれた理由には、もうひとつ宮澤壯佳さんのライナー・ノートがある。すでにヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコは聴いていたし、それがアンディ・ウォーホルのプロデュースであり、バンドがファクトリーに出入りしていて、ウォーホルのイヴェントに出演した、ということは予備知識として持っていたが、このLPはそれよりももっとファクトリー、ウォーホル周辺のキャンプ感覚というものに彩られているように思う。どこかけばけばしい、でもか細い、不思議な色艶のある音楽である。それはなにかイケナイもの、というような印象を与えるに十分だった。宮澤さんのライナーは、そんなこのLPの魅力をしっかりと僕に伝えてくれた。当時そのLPには訳詞がついていなかったが、歌詞を仔細に読み解くその解説を何度読んだことだろう。
もうひとつは、サウンドのプロダクションにある。ボウイとミック・ロンソンのプロデュースは、そのキャンプな人工的な美、とでもいうものを音として表現しきっている。演奏、ギターの音色、ボウイとロンソンのコーラス(これが特にすごい)、どれをとっても彼らの他の作品には聴くことができない、この作品だけの世界観を作り上げている。それはほんとうに希有な3人の才能の結晶化したものだ。
歌詞においてもキャンプな登場人物が多数登場し、さまざまなシチュエーションが歌い込まれている。昨日訳した「俺は(そういったものごとを)テレビで見るのが好きだ」というくだりはいかにもウォーホルっぽくて好きだ。


     ただ完璧な一日
     公園でサングリアを飲み
     そのうち暗くなってきたから
     家に帰った


     ただ完璧な一日
     動物園で動物に餌をやり
     そのあと映画も観て
     で、家に帰った


     ああ、なんて完璧な一日なんだ
     きみと過ごせてうれしい
     ああ、完璧な一日だ
     きみは僕を離れさせない
     きみは僕を離れさせない


     ただ完璧な一日
     問題はすべてそのまま
     ぼくらの週末を過ごそう
     楽しいじゃないか


     ただ完璧な一日
     きみは僕が僕だということを忘れさせた
     思うに僕は誰かだった
     誰かほかのいい奴


     ああ、なんて完璧な一日なんだ
     きみと過ごせてうれしいよ
     ああ、完璧な一日だ
     きみは僕を離れさせない
     きみは僕を離れさせない


     きみはただ自分の見たものだけを受け入れる

"Perfect Day"